COLUMN

ウミガメのスープを食べるには?

「ウミガメのスープ」と聞いて思い浮かぶのは、水平思考クイズだろう。だが、ウミガメの肉を使ったスープは実在し、しかも日本国内で食べられる。どこで、どう食べられるのかを整理する。

実は、本物のウミガメのスープが存在する

ある男がレストランでウミガメのスープを注文する。一口飲んだ男は、それが以前に食べたものとは違うと気づき、店を出た後に自殺してしまう。

この話に登場するウミガメのスープは、架空の料理のようにも思える。しかし、ウミガメの肉を使ったスープは実際に存在する。しかも日本国内で食べることができる。

現在、比較的行きやすい場所として確認できるのは、東京・新宿にある「青ヶ島屋」だ。

新宿で食べられる「あのウミガメのスープ」

青ヶ島屋は、青ヶ島や八丈島など東京諸島の食材を扱う郷土料理店である。東京都の「とうきょう特産食材使用店」にも掲載されており、西新宿で営業している。ウミガメの刺身など、一般の飲食店ではまず見かけない料理も扱っている。

この店では、ウミガメの内臓などを煮込んだ料理を「あのウミガメのスープ」として提供している。

2026年2月に訪れた人の記録では、メニュー上ではウミガメのモツ煮に近い料理で、スープにはゼラチン質のコクがあり、魚臭さはほとんどなかったという。味は牛すじのおでんに似ていたと書かれている。

店の2026年の告知でも、ウミガメの刺身とともに「あのウミガメのスープ」が現在も提供されていることが確認できる。もっとも、ウミガメは入荷量が限られている。常時注文できるとは限らないため、これを目当てに行くなら事前に店へ確認した方がよい。

したがって、水平思考クイズに出てくる料理をとにかく一度食べてみたいなら、現時点では新宿の青ヶ島屋が現実的な選択肢になる。

ただし、そこで出てくるのは洋食店のコンソメスープのようなものではない。ウミガメの肉や内臓から出た脂とだしを味わう、煮込み料理に近い。

本場の小笠原では「カメ煮」として食べられている

ウミガメ料理の本場は、小笠原諸島である。

小笠原で主に食用とされているのはアオウミガメだ。島内の飲食店では、刺身と煮込みが定番料理として提供されている。煮込みは肉や内臓などのさまざまな部位を、塩と玉ねぎで煮込んだものだという。

一般には「ウミガメのスープ」ではなく「カメ煮」や「亀の煮込み」と呼ばれる。しかし、肉や内臓を煮込み、そのだしごと食べる料理なので、水平思考クイズに登場するウミガメのスープに最も近い郷土料理と考えてよいだろう。

実際にアオウミガメの肉を使ってスープを作った記録では、水と酒で煮るだけでも短時間で濃い脂と旨味が出たと報告されている。スッポンに近い部分もあるが、独特の風味があるという。

小笠原の現地事業者が2026年5月に更新した情報では、刺身や煮込みだけでなく、チャーシューやホルモンなども通年料理として紹介されている。漁の時期にあたる3月から5月ごろには、内臓や卵などの限定部位が出ることもある。

刺身は赤身で、馬刺しに近いと表現されることが多い。一方、カメ煮は独特の香りや脂があり、好みが分かれやすい。緑色がかった部分が入っていることがあるが、これはアオウミガメの脂肪が青緑色をしているためである。

カメ煮は店によって味や作り方が異なる。塩味のシンプルなものもあれば、ポン酢仕立てにして食べやすくしたものもある。現地では、このほかにも次のような料理が提供されている。

保護されているウミガメを、なぜ食べられるのか

ウミガメ類はワシントン条約の附属書Ⅰに掲載されている。附属書Ⅰに掲載された動物は、商業目的の国際取引が原則として禁止される。生きた個体だけでなく、肉や甲羅などの部位や加工品も規制の対象になり得る。

ただし、ワシントン条約が直接規制する中心は国境を越える取引であり、「ウミガメを食べる行為そのもの」を世界中で一律に禁止しているわけではない。

日本国内では種の保存法による取引規制や、各地域の漁業規則が別に存在する。したがって、ワシントン条約に掲載されているから国内利用がすべて自由ということでもない。

小笠原では、地域に残る食文化と資源保護を両立するため、東京都の漁業規則に基づいてアオウミガメの捕獲枠が設けられている。

年間の捕獲上限は父島55頭、母島80頭の合計135頭。捕獲できるのは全長75センチ以上の個体に限られる。過去には乱獲によって数を減らした歴史があり、現在は捕獲数を制限しながら利用されている。

旅行者が自分でウミガメを捕まえて料理できるという意味ではない。認められた漁によって捕獲され、正規に流通した肉を飲食店で注文する必要がある。

海外でウミガメの肉や加工品を買い、日本へ持ち込むのも避けるべきである。国際取引にはワシントン条約と輸出入規制が関係するため、現地で普通に売られていたとしても、日本へ持ち込めるとは限らない。

小笠原へ行く場合は片道24時間

小笠原で本場のカメ煮や亀刺しを食べるには、東京の竹芝客船ターミナルから「おがさわら丸」に乗って父島へ向かう。

小笠原には民間旅客機が発着する空港がなく、おがさわら丸の所要時間は片道約24時間。出港日程によっては、島に数日間滞在する必要がある。

到着すれば複数の飲食店でウミガメ料理を扱っているが、すべての料理が常にそろっているわけではない。特に新鮮なレバーや卵などは漁の時期に限られるため、店頭で入荷状況を確認する必要がある。

ウミガメのスープを食べる二つの方法

日本で実際にウミガメのスープを食べる方法は、大きく分けると二つある。

手軽さを優先するなら、新宿の青ヶ島屋で「あのウミガメのスープ」を注文する。入荷や売り切れがあるため、事前確認は必要になる。

小笠原の食文化まで含めて体験するなら、父島へ行き、カメ煮や亀刺しを食べる。こちらではスープという名前ではないものの、ウミガメの肉や内臓を煮込んだ本来の郷土料理を味わえる。

水平思考クイズでは、男はスープを一口飲んだだけで、それが以前に食べたものとは違うと気づいた。

実物の味がそこまで明確に判別できるものなのか。それを確かめること自体は、日本でも可能である。

※店舗の営業状況、料理の価格、入荷状況、捕獲規制は変更される可能性があります。この記事は2026年7月に確認できた情報を基にしています。

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